あなたのバンゲリング帝国はどこから? (ロードランナー編) [レトロゲーム]
『チョップリフター』『ロードランナー』および『バンゲリングベイ』に共通の敵としてバンゲリング帝国が登場することは、今やレトロゲームファンの間でよく知られています。
(ただし、これらを指して「世界観を共有する三部作」と表現するのは適切ではないという指摘を過去に当blogで行っています。未読の方は是非ともご覧ください)
〇幻想のバンゲリング帝国
〇「バンゲリング帝国」が登場する第四のゲーム
ところで上に挙げた三作品のうち、日本において最も多くのプラットフォームで発売されているのは『ロードランナー』です。しかしその発売タイトル数に比して、敵の名前がバンゲリング帝国であると明示されている例は少ない…と言われると、意外に思われるのではないでしょうか?
というわけで論より証拠。
本稿では90年代前半までに日本国内で発売された『ロードランナー』について、説明書等に記されているストーリー文を参照し、ゲームの舞台がどのように表現されているかを確認していきます。
■Apple II版
〇Lode Runner: An action game and game generator for the Apple II (Internet Archive)
国産ロードランナーに話を進める前に、まず原典であるApple II版(1983年)に触れておきます。
上の画像の通り、説明書において敵の名は「Bungeling Empire」と記されています。英語的にはingの語尾のgを発音しないのが自然なので、「バングリン」と表記するのが原音に近いのではないでしょうか。
ところで面白いのが、その後に続くバックストーリー。「権力欲の強い帝国の指導者たちは、過大なファーストフードに対する税金によって人々から黄金の財貨を盗んだ」などと書かれています。ファーストフード税!?ランナーが奪取するあの金塊の出所には、そんな設定があったの?(笑)
■ファミコン版
ハドソンより1984年に発売。ミリオンセラーを記録し、我が国で発売された『ロードランナー』の中で最も有名なバージョンですが、実は説明書に明確なストーリー文はありません。ゲームの舞台を指す言葉として、遊び方の説明の中に「地下の金鉱」との表現がある程度です。
■SG–1000/SC-3000版
セガより1984年に発売。説明書に明確なストーリー文はありません。
■PC版(システムソフト)
NEC系PCへの『ロードランナー』の移植・販売はシステムソフトが行いました。88/98版の説明書では、敵を表す言葉として「バンジェリン帝国」との名を確認できます。
ただし、同社が刊行した『ロードランナー ファンブック』(1985年)では、「バンガリン帝国」と異なる名称が記されていたりします。所在地が中央アフリカだとか南米だとかヒマラヤ山系などと、ふわふわな説明なのがちょっと笑えます。
■MSX版
ソニーより1984年に発売。説明書にストーリー文はありますが、ゲームの舞台を指し示す固有名詞は登場しません。
ただし、1985年に発売された続編の『ロードランナー II』には、次のような記述があります。
地下帝国皇帝デスター!?間違いなくMSX版独自の設定ですが、いったいどこからデスターなどという名前が出てきたのか激しく謎です。妙に馴れ馴れしい口調なのもジワジワきます(笑)
■アーケード版(アイレム)
アイレムより1984年に発売。計4作品がリリースされています。
1作目の時点で、インストカードに「バンゲリング帝国」の名がはっきりと記されています。さらに2作目の副題は、そのものずばり『バンゲリング帝国の逆襲』。
おそらく我が国における「ロードランナーの敵はバンゲリング帝国」との認識は、このアイレムのアーケード版の影響が大きいのではないかと思われます。
■ボードゲーム版
珍品。ツクダオリジナルより1986年に発売されました。ゲームとしては2~6名で遊戯します。各プレイヤーにランナーの駒と衛兵の駒が一つずつ与えられ、金塊の獲得数を競う内容です。
そして説明書では、衛兵を指して「バンゲリング」との呼称が使われています。
■PCエンジン版
PCエンジンでは異なるパブリッシャーにより計2作品が発売されています。
まずこちらが、1989年にパック・イン・ビデオが発売した『ロードランナー ロストラビリンス』のストーリー文。
敵の名前は「バンガリン帝国」と表現されていますが、なんとファーストフード税の設定があります!まさかオリジナル版を踏襲しているとは、やるな、パック・イン・ビデオ!(笑)
そしてもう一つが1993年にハドソンが発売した『バトルロードランナー』。ファミコン版に比して、あまり知名度は高くない作品です。
見ての通り、ストーリー文はかなりフリーダム。神楽坂のタイムマシン研究所、敵は黒ボンバーマン、金塊は奪われた研究費などと全く原型を留めていません。
■ゲームボーイ版
1989年にバンダイより『ハイパーロードランナー』とのタイトル名で発売。
敵は暗黒世界からの侵略者のダークアバロン。地下帝国へと続く伝説のラビリンスに挑むという筋書きです。RPGブームに便乗したと思われる設定ですが、中身は普通にロードランナーです。
ちなみにゲームボーイでは他に、GBC対応の『ロードランナー ドムドム団のやぼう』(2000年)が発売されていますが、本稿では割愛します。
■スーパーファミコン版
1994年にT&Eソフトより『ロードランナーツイン ジャスティとリバティの大冒険』とのタイトル名で発売。
ゲームの舞台は魔法の国のパラルランド。各ステージもケーキやおもちゃのブロックで構成されており、オリジナル版を完全に無視した独自の世界観になっています。
SFCでは他に『POWERロードランナー』(1999年)が発売されていますが、本稿では割愛します。
以上、90年代前半までの主だった『ロードランナー』について見てきましたが、いかがだったでしょうか?
本稿はあくまでゲームの発売元が示した設定に注目しており、雑誌記事や攻略本はフォローしていません。しかし、ファミコン版に明確なストーリーが無かったり、システムソフトのPC版にバンゲリング帝国の名が使われていない等、今まで抱いていた印象と異なることに驚かれた方は居ると思います。
さて、「ロードランナーの敵はバンゲリング帝国」という設定、あなたはいつからそのように認識していたのか思い出すことはできますか?
* Arcade Lode Runner Instruction image courtesy of らりぃX
(ただし、これらを指して「世界観を共有する三部作」と表現するのは適切ではないという指摘を過去に当blogで行っています。未読の方は是非ともご覧ください)
〇幻想のバンゲリング帝国
〇「バンゲリング帝国」が登場する第四のゲーム
ところで上に挙げた三作品のうち、日本において最も多くのプラットフォームで発売されているのは『ロードランナー』です。しかしその発売タイトル数に比して、敵の名前がバンゲリング帝国であると明示されている例は少ない…と言われると、意外に思われるのではないでしょうか?
というわけで論より証拠。
本稿では90年代前半までに日本国内で発売された『ロードランナー』について、説明書等に記されているストーリー文を参照し、ゲームの舞台がどのように表現されているかを確認していきます。
■Apple II版
〇Lode Runner: An action game and game generator for the Apple II (Internet Archive)
国産ロードランナーに話を進める前に、まず原典であるApple II版(1983年)に触れておきます。
上の画像の通り、説明書において敵の名は「Bungeling Empire」と記されています。英語的にはingの語尾のgを発音しないのが自然なので、「バングリン」と表記するのが原音に近いのではないでしょうか。
ところで面白いのが、その後に続くバックストーリー。「権力欲の強い帝国の指導者たちは、過大なファーストフードに対する税金によって人々から黄金の財貨を盗んだ」などと書かれています。ファーストフード税!?ランナーが奪取するあの金塊の出所には、そんな設定があったの?(笑)
■ファミコン版
ハドソンより1984年に発売。ミリオンセラーを記録し、我が国で発売された『ロードランナー』の中で最も有名なバージョンですが、実は説明書に明確なストーリー文はありません。ゲームの舞台を指す言葉として、遊び方の説明の中に「地下の金鉱」との表現がある程度です。
■SG–1000/SC-3000版
セガより1984年に発売。説明書に明確なストーリー文はありません。
■PC版(システムソフト)
NEC系PCへの『ロードランナー』の移植・販売はシステムソフトが行いました。88/98版の説明書では、敵を表す言葉として「バンジェリン帝国」との名を確認できます。
ただし、同社が刊行した『ロードランナー ファンブック』(1985年)では、「バンガリン帝国」と異なる名称が記されていたりします。所在地が中央アフリカだとか南米だとかヒマラヤ山系などと、ふわふわな説明なのがちょっと笑えます。
■MSX版
ソニーより1984年に発売。説明書にストーリー文はありますが、ゲームの舞台を指し示す固有名詞は登場しません。
ただし、1985年に発売された続編の『ロードランナー II』には、次のような記述があります。
地下帝国皇帝デスター!?間違いなくMSX版独自の設定ですが、いったいどこからデスターなどという名前が出てきたのか激しく謎です。妙に馴れ馴れしい口調なのもジワジワきます(笑)
■アーケード版(アイレム)
アイレムより1984年に発売。計4作品がリリースされています。
1作目の時点で、インストカードに「バンゲリング帝国」の名がはっきりと記されています。さらに2作目の副題は、そのものずばり『バンゲリング帝国の逆襲』。
おそらく我が国における「ロードランナーの敵はバンゲリング帝国」との認識は、このアイレムのアーケード版の影響が大きいのではないかと思われます。
■ボードゲーム版
珍品。ツクダオリジナルより1986年に発売されました。ゲームとしては2~6名で遊戯します。各プレイヤーにランナーの駒と衛兵の駒が一つずつ与えられ、金塊の獲得数を競う内容です。
そして説明書では、衛兵を指して「バンゲリング」との呼称が使われています。
■PCエンジン版
PCエンジンでは異なるパブリッシャーにより計2作品が発売されています。
まずこちらが、1989年にパック・イン・ビデオが発売した『ロードランナー ロストラビリンス』のストーリー文。
敵の名前は「バンガリン帝国」と表現されていますが、なんとファーストフード税の設定があります!まさかオリジナル版を踏襲しているとは、やるな、パック・イン・ビデオ!(笑)
そしてもう一つが1993年にハドソンが発売した『バトルロードランナー』。ファミコン版に比して、あまり知名度は高くない作品です。
見ての通り、ストーリー文はかなりフリーダム。神楽坂のタイムマシン研究所、敵は黒ボンバーマン、金塊は奪われた研究費などと全く原型を留めていません。
■ゲームボーイ版
1989年にバンダイより『ハイパーロードランナー』とのタイトル名で発売。
敵は暗黒世界からの侵略者のダークアバロン。地下帝国へと続く伝説のラビリンスに挑むという筋書きです。RPGブームに便乗したと思われる設定ですが、中身は普通にロードランナーです。
ちなみにゲームボーイでは他に、GBC対応の『ロードランナー ドムドム団のやぼう』(2000年)が発売されていますが、本稿では割愛します。
■スーパーファミコン版
1994年にT&Eソフトより『ロードランナーツイン ジャスティとリバティの大冒険』とのタイトル名で発売。
ゲームの舞台は魔法の国のパラルランド。各ステージもケーキやおもちゃのブロックで構成されており、オリジナル版を完全に無視した独自の世界観になっています。
SFCでは他に『POWERロードランナー』(1999年)が発売されていますが、本稿では割愛します。
以上、90年代前半までの主だった『ロードランナー』について見てきましたが、いかがだったでしょうか?
本稿はあくまでゲームの発売元が示した設定に注目しており、雑誌記事や攻略本はフォローしていません。しかし、ファミコン版に明確なストーリーが無かったり、システムソフトのPC版にバンゲリング帝国の名が使われていない等、今まで抱いていた印象と異なることに驚かれた方は居ると思います。
さて、「ロードランナーの敵はバンゲリング帝国」という設定、あなたはいつからそのように認識していたのか思い出すことはできますか?
* Arcade Lode Runner Instruction image courtesy of らりぃX
アーケード版(アイレム)のロードランナーで、バンゲリング帝国の逆襲 と
サブタイトルでついていた為
少なくとも、前作からと思っておりました。
(※AC、ファミコン版以外、PC版他は全く知りません。)
ご存知かとは思いますが
ファミコンディスク版で
アイレムから、スーパーロードランナー
と言う名前で、2作品出ていたようです
(※タイトル等、間違いならすみません)
こちらも調べて頂けないでしょうか?
by zrs90 (2022-10-03 09:15)
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by 안전놀이터 (2023-09-09 14:01)