SSブログ

幻想のバンゲリング帝国 [レトロゲーム]

バンゲリング帝国三部作は、『バンゲリングベイ』『ロードランナー』『チョップリフター』の世界観を共有する3作品を指す。

バンゲリング帝国三部作 (from Wikipedia)

結論から先に述べると、『チョップリフター』、『ロードランナー』、『バンゲリングベイ』の敵役として登場するバンゲリング帝国は名前以外の共通点を見出すことができず、"世界観を共有する"などと断言することはできません

まず、これらの3作品が"Brøderbund社でオリジナル版の制作が行われていた"とするWikipediaの説明は不適切です。
『チョップリフター』の作者はダン・ゴーリン、『ロードランナー』の作者はダグ・スミス、そして『バンゲリングベイ』の作者はかの有名なウィル・ライトです。彼らはそれぞれ、ブローダーバンドとは独立した立場でゲームを開発しました。(Wikipediaのウィル・ライトの項には、"ブローダーバンド社にデザイナーとして勤め"とありますが、これは事実に反します)

80年代前半当時はまだゲームの開発規模が大きくなかったため、個人のプログラマーがゲームを製作し、大手のゲーム会社に売り込むことが珍しくありませんでした。
即ち、"バンゲリング帝国三部作"に関してブローダーバンドが果たした役割は、あくまでパブリッシングなのです。

そしてブローダーバンドが発売したオリジナル版では、バンゲリング帝国の所在地に関する説明が3作品ごとに明らかに異なっています。


■『チョップリフター』の場合
In the area which lies a few miles east of Patagonia and to the south of Kurdistan lies the Bungeling Empire

Choplifter! cover art (from MobyGames)

海外で発売されたブローダーバンド版のパッケージでは、バンゲリング帝国は「パタゴニア(南米大陸南端)の数マイル東とクルディスタン(中東)南部の領域」と説明されています。
大西洋を挟んで飛び地になっている気がしないでもないですが(笑)、ともあれ現代の地球上に存在する国家であることが伺えます。


■『ロードランナー』の場合
海外版『ロードランナー』に関しては、バンゲリング帝国の位置を示す情報をパッケージ裏のストーリー文から読み取ることはできません。ただし本作の主人公を指して、"Galactic commando"(銀河の戦士)と表現されています。
このことから『ロードランナー』の舞台は、少なくとも現代の地球上ではないと判断しても差し支えないでしょう。


■『バンゲリングベイ』の場合
On a small planet in a remote corner of the universe, the evil Bungeling Empire has created the fearsome enemy you will ever face: The War Machine.

Raid on Bungeling Bay cover art (from MobyGames)

84年にCommodore64で発売されたオリジナル版『バンゲリングベイ』では、ゲームの舞台は「宇宙の彼方の小さな星」と書かれています。
Wikipediaの中でも引用されているケイブンシャ攻略本の「カリブ海上の異空間」という設定は創作であり、地球外の惑星に位置することをはっきりと示しています。


以上のように、『チョップリフター』、『ロードランナー』、『バンゲリングベイ』に登場するバンゲリング帝国は、これらの3作品を発売する際にブローダーバンド社によって名付けられたものであり、"バンゲリング帝国"との名前以外に何ら共通点が存在しないことがわかります
別にこれが個人のblogやWEBサイトなら僕もうるさく言うことはないのですが、独自見解や私的研究を禁じている筈のWikipediaでこれほど杜撰な編集が行われているのは見過ごせません。個人的には、"バンゲリング帝国三部作"の項目自体を削除するべきではないかと思います。

・・・ところでよく考えてみると、『バンゲリングベイ』の100画面分のマップが一つの惑星を表現しているのだとすれば、南と北でループしているのは理屈に合いません。(意味が判らない方は、実際に地球儀を眺めてみて下さい)
まあ、そのあたりは「ドラクエでも同じだから仕方ないな」と割り切ることにしましょう(笑)
タグ:ゲーム
nice!(5)  コメント(5)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ゲーム

nice! 5

コメント 5

M_t

不躾で、すみません。
前から、"バンゲリング"でお聞きしたい事があったんです。
雑誌に、ボードゲーム版ロードランナーの説明(実際に遊んだことないから、分かりませんが)で、プレイヤーがRunnerとバンゲリングに分かれてプレイするようなことが書かれてたと思うんですが、敵兵の名称がバンゲリングなんでしょうか?それとも、バンゲリング帝国サイドという意味でバンゲリングなんでしょうかね?

あと、ウィル・ライト氏はBrøderbund社にデザイナーとして、勤めてはいなかったんですか・・・。ダン・ゴーリン氏やウィル・ライト氏がBrøderbund社の社員旅行で、つくば万博に来日してるスナップ写真や記念写真が雑誌に載っていたので、てっきり勤めていると思ってました。
そん時、日本でFCのバンゲリングベイのCM見て、感激したらしいですよ。(笑)

by M_t (2009-05-04 15:53) 

loderun

ツクダから発売されたロードランナーのボードゲームですが、実は所有しています(笑)。
"プレイヤーがRunnerとバンゲリングに分かれてプレイする"のではなく、正確には各プレイヤーにロードランナーの駒と番兵の駒が一つづつ与えられ、最も多く金塊を回収したプレイヤーが勝ちというルールです。
尚、マニュアルでは番兵の駒を「バンゲリング」と表現されています。

ウィル・ライト氏が『バンゲリングベイ』開発当時にブローダーバンドに所属していたとする英文ソースは見たことがありません。僕が知る限り、ライト氏のbiographyではいずれも「独力で開発した」と記されています。
http://www.biographytoday.com/downloads/willwright.pdf

当時のブローダーバンドってパブリッシャー色が強かったんです。例えるなら、日本のエニックスみたいな感じでしょうか。
ダン・ゴーリン氏も会社勤めのかたわら、ほぼブローダーバンドの専属に近い形でゲーム開発に関わられていたそうで、緩やかな時代であったことが伺えます。
by loderun (2009-05-04 17:26) 

M_t

>実は所有しています
おお、それは レアな一品をお持ちで。
・・・というか、loderunさんなら、高い確率で持ってると踏んでましたよ(笑)
バンゲリングの回答ありがとうございました。
by M_t (2009-05-04 21:06) 

柾木神威

Iremから出たロードランナーⅡは「帝国の逆襲」、ロードランナーⅣには「帝国からの脱出」の副題がついてますね。
この帝国がバンゲリングであるのは間違い無い訳ではありますが、まぁ、後付でもどうとでも取れますか。

by 柾木神威 (2009-05-28 00:51) 

loderun

「帝国の逆襲」ですが実際のタイトル画面をご覧の通り、そのものズバリ「The Bungeling Strikes Back」との名が付けられていますので、バンゲリング帝国で間違い無いと思います。
http://www.klov.com/game_detail.php?game_id=8445

つうかアーケード版に登場する、あの変な魔人像はなんなんでしょう。もしかして、あれが噂のバンゲリング皇帝?(笑)


by loderun (2009-05-29 19:25) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。