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カドカワ以来 ― Ever since Kadokawa [レビュー]

ハルヒ、時かけ好調の角川ビジネスに注目が (from アニメ!アニメ!)

TVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』、および劇場映画『時をかける少女』のヒットについての論評。日経産業新聞の元記事はネット上で閲覧できないのだが、上に挙げたアニメ!アニメ!さんによればこれらのアニメが成功した要因として、作品本来の魅力、ソフトウェア販売との連携、低コストの実現、多メディア展開といった点を指摘しているとのことだ。

残念ながら僕は『ハルヒ』も『時かけ』も観ていないので、“作品の魅力”について言及できる立場にない。
また、上記記事以外にも、『ハルヒ』、『時かけ』のヒットを支えたのは“ネットを介した口コミ力”だとの分析もある。
「亀田」と「時かけ」 - メディアの扇動力がネットに圧される時代
「ハルヒ」「男前豆腐」に見る、ブログ時代のヒットの条件

デジモノに埋もれる日々さんは、亀田問題にからめて「メディアの扇動力が以前ほど発揮できなくなっている」と断言されているけれど、別にこれは「マスメディア VS ネット」といった二者択一的な話ではないだろう。両者がうまいぐあいに相乗効果を果たした結果なんじゃないかな。

それはそうと、話を戻して日経産業新聞の分析について。
個人的に猛烈にツッコミたくなったのが、「角川グループが原作から映像化まで自ら一貫して行う」との部分。別にこういった角川のビジネス手法って、今に始まったことじゃないんだよね。
日経の元記事が読めないのでどういった文脈で出てきた表現かはわからないけど、そもそも我が国でメディアミックス的な商業展開を初めて成功させた会社こそ、他でもない角川書店なのだ。
その辺りの話は、Wikipediaの角川映画の項にうまくまとめられているが、以下補足。

1975年 ― 角川春樹社長(当時)は、父・源義の後を継いで角川書店の「全権」を握った。
その翌年、かの横溝正史原作『犬神家の一族』を引っさげて、角川映画はデビューを果たす。かつての権勢を失っていたとはいえ、5社協定がいまだ根強く残っていた当時の映画業界に殴りこみをかけることは、“蛮勇”と取られても仕方ない行為であった。
しかし春樹氏は、『犬神家』の成功に確信を抱いていた。

何故なら、当時の角川書店は海外映画の原作の出版を数多く手がけており、それらがよく売れることを知っていたのだ。要するに、映画と出版との間のタイアップである。例えば70年のアメリカ映画『ある愛の詩』の原作は、文庫本で100万部以上を販売するベストセラーとなった。
春樹氏が、タイアップからさらに踏み込んで「映画の自社製作」を決意したのは、当然の流れであると言えよう。

春樹氏が狙ったのは、一言で言うと「本・映画・音楽の三位一体」である。
自社が出版する原作小説を自ら映像化し、同時に音楽ソフト(当時はアナログレコードの時代だけど)を販売する。まさしく今日我々が知る、メディアミックス的商業展開を行ったのだ。
テレビに大量のCMを投入し世間の関心を集める。その上で、原作本を百万単位で増刷する。当然、角川文庫にはもれなく映画の宣伝しおりが折り込まれた。さらに(当時としては異例なことだが)、撮影に先行する形でサントラアルバムが製作されたのだ。

結果として、『犬神家の一族』は15億円を越す配給収入を記録した。これは76年公開の邦画としては第二位の数字である。
『犬神家』の成功は、同時に我が国の文化産業におけるメディアミックス商法の始まりでもあった。角川映画自身、その後も物量宣伝と「本・映画・音楽の三位一体」により、次々とヒット作を生み出していった。

もちろん今となっては、マスを相手にする物量宣伝は通用し難くなっている。消費者の嗜好が多様化、細分化してしまったからだ。
けれども、特定層をターゲットに絞り込んだ上でのメディアミックス展開は、まだまだ有効なのだろう。そんな訳で『ハルヒ』や『時かけ』の成功は、ある意味でかつての“角川映画商法”と同一軸上にあるんじゃないかなぁ、などと個人的に考えさせられた感じの秋の夜でした。

あ、それにしても『ハルヒ』は一度見てみるべきなんだろうな。なんか「エヴァ以来の傑作アニメ」との声があるようで、気になっています。
…YouTubeを利用するかな(笑)


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  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • 発売日: 2000/08/25
  • メディア: DVD


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そうてん

初めまして。そうてんと申します。
『ハルヒ』や『時かけ』と『犬神家の一族』に共通する角川の戦略を初めて
知りました。
ちなみに私はハルヒファンですが、あれは一般の方にもオススメできる作品です。評価は色々ありますが、一見する価値はあると思います^^
by そうてん (2006-09-09 21:41) 

loderun

こちらこそはじめまして♪ nice!ありがとうございます。
そうてんさんは若いアニメファンのようですが、それこそ『幻魔大戦』とか『カムイの剣』とか、80年代の角川アニメ映画って宣伝が凄かったんですよね。

ハルヒは是非とも観てみようと思います。僕は「一般の方」ではないので無問題(笑)
by loderun (2006-09-10 15:10) 

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