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偏愛ゲーマー的映画評 ― 『バタフライ・エフェクト』 [日記・雑感]

バタフライ・エフェクト プレミアム・エディション

バタフライ・エフェクト プレミアム・エディション

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • 発売日: 2005/10/21
  • メディア: DVD

「最高の映画」、「心震わす感動作」、「全米が泣いた!」などと、ネット上でも賞賛の声(一部まちがい)が多い作品です。
遅ればせながらDVDを購入してみました。

(あらすじ)
子供のころの日記を読み返すことにより、過去に戻れる能力を持つ主人公。初恋の女性を救うために、彼は過去の出来事を“修正”する。
だが、皮肉なことに何度過去を修正しても、必ず誰かが不幸になる。苦悩の末に主人公が下した決断とは?

(感想)
■タイムマシンこそ登場しませんが、立派な歴史改変モノです。僕の大好きなジャンルですね。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の例をあげるまでもなく、「不幸な人生を予め観客に提示した上で、主人公の努力により運命を覆す」というのが、この手のストーリーの常套手段でしょう。

しかし本作は違います。主人公が良かれと思って過去を何度も修正するにもかかわらず、揃いも揃って鬱エンディングになってしまう。
このもどかしい感覚、どこかで味わったことがあるなぁと思っていたのですが、判りました。

それは、サウンドノベルタイプのアドベンチャーゲームです。

■例えばチュンソフトの大ヒット作『かまいたちの夜』ですが、アレの何が素晴らしいかと言うと2、3回程度のプレイではまず間違いなく「事件の真相」に辿りつけないシナリオデザインですね。
んで、バッドエンドに至ってしまったプレイヤーは、慎重に考えながら前回とは異なる選択肢を取る。それでも、「姿無き殺人者」を止めることができずに、何度もゲームオーバー画面を眺めていることになります。

つまり『バタフライ・エフェクト』は、“マルチエンディングADVのリプレイ”として見ることができる映画なのです。主人公は日記を読むことにより、セーブしたポイントからゲームを再開している訳ね。

■ところで『かまいたちの夜』に限らず、近年のADVは「繰り返しのプレイ」により「多くの結末」を知ることで、「ストーリーの全体像が明らかになる」というスタイルが定着しています。

また、同様の手法はゲームのみならず、映像作品でも先例があります。
例えば僕が真っ先に思い出したのが、フジテレビの深夜番組で以前に放送されていた「if もしも」というドラマ。岩井俊ニの「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」は心の底からもう一度観たい作品です。
あるいは、日テレで堂本剛が主演した「君といた未来のために」とか。

■しかし類例が存在するからと言って、この『バタフライ・エフェクト』のオリジナリティーを疑うつもりは全くありません。
魅力的な登場人物たち、思わず引き込まれるストーリー展開、そして複雑なプロットが破綻することなくエンディングへと収束する脚本は素晴らしいと思います。

普段映画を見ないような人でも、『バタフライ・エフェクト』は必見の作品であると断言します。
それこそTVドラマ版『かまいたちの夜』とか、こういう撮り方にしてほしかったなぁ(笑)

(さらに踏み込んだ感想) *ネタバレのため、反転表示 
■上にも書いたとおり、歴史改変モノのセオリーは「運命の逆転がもたらすカタルシス」なのですが、そのようなものを期待して本作のエンディングを迎えると椅子から引っくり返ること必至です。

それも道理で、製作者自らが『バタフライ・エフェクト』のテーマは「サクリファイス」であるとはっきり述べています。
sacrificeとは直訳すると「犠牲」や「生贄」という意味ですが、本作の場合はニュアンス的に「人身御供」と表現した方が近いと思う。

■それが顕著に表れているのが、DVDの2枚目に収録されているディレクターズカット版です。
実は『バタフライ・エフェクト』の当初の脚本案を踏襲したのが、このディレクターズカット版なのですが映画会社の反対を受けて、上映版は結末が差し替えられました。

製作者のコメンタリーを聞くと、「こっちの方が感動的なのに、お偉方は判ってないなぁ」などと不満をこぼしていますが、ハッキリ言って僕には悪趣味としか思えない話の終わり方です。
なんと言うか、欧米人との文化とか宗教観の違いを、改めて思い知らされました。

■最後になりますが、蛇足と知りつつも一点。
『バタフライ・エフェクト』のタイトル名に、個人的には異議を唱えたい。

「小さな蝶の羽ばたきが、地球の裏側で嵐を起こす」との元の意味から考えると、本作での“歴史の変化”はスケールが小さすぎるように思えてならないのです。
どうせやるなら、「彼女の運命を変えたら、人類が滅亡しちゃいました」ぐらいの大風呂敷な続編を希望。

あ、それって『ターミネーター』か(笑)


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コメント 6

MiLD_GiNGER

この映画、CMだったか何かの映画の最初に観たのか、
ストーリーに聞き覚えがあります。
すごく興味アリです。(なので反転部分は観た後でw)
今週末にでもレンタルで探してみます♪
by MiLD_GiNGER (2006-01-05 22:07) 

loderun

>>MiLD_GiNGERさん
レンタル店で借りることはできましたか?
ただ、上の記事でも薄々判るかと思いますが、かなり切ない映画です。彼女と一緒に観た日には、確実に気分が沈むかも。
やはり僕は、どんな映画でもハッピーエンドが好きです。
by loderun (2006-01-08 21:46) 

MiLD_GiNGER

観よう観ようと思っていて、ついに観ました^^;
いや、コレ最近観た映画の中では最高でした!
loderunさんの記事見なかったらたぶん観なかった、きっと。
なのでありがとうございましたといわせてください!
感想はそのうち記事にでもしようと思ってるので暇があったら見てくださいw

そしてやっと反転記事読みました。
ディレクターズカット版とはどんなエンディングだったんでしょうか。
レンタルには別エンディングが2つ用意されていましたが(すごく短いのですが)それのことなんでしょうかね?

簡単に書くと、
本編の最後は、ヒロインの人は気づかずにいってしまう。
別1.主人公がヒロインの人を追いかける。
別2.振り向いた二人の目が合い、話しかける。
ってエンディングでした。

このコメントまずかったら消しちゃってください ^^;
by MiLD_GiNGER (2006-02-12 15:17) 

loderun

>>MiLD_GiNGERさん
お、観ましたか。お役に立てたようでなによりです。

ディレクターズ版ですが、結論から言うとMiLD_GiNGERさんが観られたものとは全く別です。結末のみならず、本編部分にも公開版と異なる点があります。
セルDVDでは2枚目のディスクに収められているのですが、どうやらレンタル向けには1枚しか供給されていないようですね。

「最高の映画」と思われたのでしたら、僕の口から説明するよりも、実際に観た方が良いと思います。是非とも購入を考えてみては如何でしょう?
その時は、僕の記事にあるAmazonリンクをよろしくお願いします(笑)
by loderun (2006-02-13 20:41) 

MiLD_GiNGER

本編まで違うところがあるのですか・・・うーん気になりますね ^^;
このところ(というかずっとですが)ビンボーしているので購入悩みます。
でも欲しい・・・。
購入の際にはもちろんAmazonリンク利用させていただきますw
by MiLD_GiNGER (2006-02-22 21:33) 

loderun

DVDの発売元が大手ではないので、廉価版として再販される可能性は薄いと思います。無理にAmazonに注文しなくてもいいですから(笑)、こまめに中古のDVDショップに足を運ばれてはいかがでしょうか?
by loderun (2006-02-22 23:41) 

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