「ファミコンミニ」の販売本数について思ったこと (その2) [レビュー]
その1の続きです。
最初に断っておきますが、今回の記事は無駄に長いです(笑) 読むのが面倒な人は、一番下の「結論」だけご覧下さい。
さて、メディアクリエイトのデータを元に「ファミコンミニ」シリーズの販売本数が明らかになった。
それでは今回の「ファミコンミニ」の中で、販売本数の多かったのは、どのタイトルであったか?トップ10位までのランキングを示したのが次の表だ。
■「ファミコンミニ」シリーズの販売本数ベスト10
順位 | タイトル | 本数(万本) |
1 | スーパーマリオブラザーズ | 83.2 |
2 | スーパーマリオブラザーズ2 | 33.6 |
3 | ゼルダの伝説1 | 22.6 |
4 | アイスクライマー | 18.6 |
5 | がんばれゴエモン! からくり道中 | 18.2 |
6 | ドンキーコング | 16.3 |
7 | リンクの冒険 | 13.4 |
8 | ゼビウス | 12.4 |
9 | ボンバーマン | 11.9 |
10 | パックマン | 11.7 |
合計 | 241.9 |
前回の記事に書くのを忘れていたが、「ファミコンミニ」シリーズ全体の推定販売本数は合計376.3万本。これに対して、上に挙げたベスト10タイトルの合計本数は241.9万本となる。実に全体の64%を占める。
この数字は「スーパーマリオ」に負う所が大きいことは否定しない。しかし、一見すると名作揃いに見える「ファミコンミニ」でも、ユーザーの支持するタイトルには、くっきりと明暗が分かれた形だ。
では、この販売本数の違いは、どういった理由により生じたのか?
以下、いくつか実例をあげて検証してみたい。
1. FC版の販売本数との相関関係
「ファミコンミニ」で最も売れたタイトルは、国内681万本とFC最大の売上記録を持つ「スーパーマリオ」であった。
そこで極めて単純な発想ではあるが、「ファミコンミニ」の売上は、オリジナルであるFC版の販売本数と関係があるのではないだろうか?両者を比較してみることにした。
残念ながら、すべてのFC版の販売本数はわからなかったが、下記の通り「ファミコンミニ」第一弾の10タイトル、および他のミリオンセラーを達成した6タイトルについて数字を示す。
尚、第一弾10タイトルのソースはファミ通.comのこちらの記事(元は任天堂のリリースの数字)、他についてはWikipediaをはじめとするWEB上のデータベースを参考にした。
■「ファミコンミニ」とオリジナル版との販売本数の比較
第一弾 | ||
タイトル | 本数(FC) | 本数(ミニ) |
スーパーマリオブラザーズ | 681 | 83.2 |
ドンキーコング | 88 | 16.3 |
アイスクライマー | 100 | 18.6 |
エキサイトバイク | 157 | 9.4 |
ゼルダの伝説1 | 169 | 22.6 |
パックマン | 48 | 11.7 |
ゼビウス | 127 | 12.4 |
マッピー | 71 | 9.5 |
ボンバーマン | 80 | 11.9 |
スターソルジャー | 100 | 6.6 |
その他 | ||
タイトル | 本数(FC) | 本数(ミニ) |
マリオブラザーズ | 163 | 8.2 |
ドクターマリオ | 153 | 11.5 |
高橋名人の冒険島 | 105 | 7.2 |
スーパーマリオブラザーズ2 | 265 | 33.6 |
メトロイド | 104 | 4.4 |
リンクの冒険 | 161 | 13.4 |
*注 FC版の販売本数は書換、ディスク版を含む。(単位:万本)
結論を言うとFC版の売り上げとファミコンミニの売り上げは、全く相関が無いことがよく判る。
もっとも、(自分で書いておいてなんだが)この結果は予想通りであった。以下、主要タイトルについて具体的に指摘してみたい。
2. 「売れた」タイトルと、「売れなかった」タイトル
「ファミコンミニ」の中には、“売れなかった理由”が明確なタイトルも無いわけではない。
例えば「メトロイド」は、ファミコンミニのリリース直前に「メトロイド」のリメイク作である「メトロイドゼロミッション」が発売されてしまった。その上、「ゼロミッション」には、ゲームクリア後の追加要素としてオリジナルの「メトロイド」がプレイ可能になるというおまけ付き。
「ゼロミッション」を所有していれば、ファミコンミニの「メトロイド」は不要であることは明らかだ。
これは「マリオブラザーズ」も同様。GBAでは既に、アレンジ作品を収録した「スーパーマリオアドバンス2」が発売済みである。
その一方で、非常に健闘しているタイトルもある。
「スーパーマリオ」の続編であり、シリーズ随一の高難度を誇る「スーパーマリオブラザーズ2」は33.6万本と、堂々の販売本数第二位にランクイン。
「パックマン」はFC版発売時は48万本と、―その歴史的価値の高さに比べると―控えめな数字であったが、ファミコンミニでは販売本数ランキング第10位の11.7万本。「ギネス入りタイトル」の面目躍如と言える。
「ゼルダ1」の販売本数が最新作の「ふしぎの帽子」に迫る数字である事や、「ゼビウス」がGBAの歴代STGの販売本数一位である点は前回の記事でも述べた。
さらに、「ファミコンミニ」シリーズでは唯一の“パズルゲーム”ながら、11.5万本を販売した「ドクターマリオ」も外せない。ゲームボーイミクロの発売に併せてリリースされた「ドクターマリオ&パネルでポン」も堅調であり、根強い人気を感じる。
ところで、「がんばれゴエモン!からくり道中」(18.2万本)が販売ランキング5位と大健闘したことに対し、「悪魔城ドラキュラ」がわずか5.7万本であった点は意外に思えた。共にコナミの名作ACTとの呼び声高い。さらに、FCのROM版「悪魔城ドラキュラ」は生産本数が少なかったこともあり一時はプレミア価格で取引されていた。
この違いは何故生じたのであろうか?
3. テレビCMと売上本数との関係
実は、上に挙げた"売れたタイトル” ― 「スーパーマリオ2」、「パックマン」、「ゼビウス」、「ドクターマリオ」、「がんばれゴエモン!」には、ある共通点が存在する。
それは、ファミコンミニのテレビCMに取り上げられたタイトルである事だ。
今回の「ファミコンミニ」の成功は、“ファミコン生誕20周年”という好機に乗じたことに加えて、任天堂の圧倒的なブランドと宣伝力に負うところが大きいと考えられる。
では実際のところ、「ファミコンミニ」のCMに登場したタイトルは、販売本数に影響が見られるのであろうか?次の表を見て欲しい。
■「ファミコンミニ」のテレビCM登場タイトルと売上本数
CM | タイトル | 本数(単位:万本) |
第一弾 | スーパーマリオブラザーズ | 83.2 |
パックマン | 11.7 | |
ゼビウス | 12.4 | |
第二弾 | バルーンファイト | 5.9 |
ドクターマリオ | 11.5 | |
がんばれゴエモン! からくり道中 | 18.2 | |
第三弾 | スーパーマリオブラザーズ2 | 33.6 |
謎の村雨城 | 4.3 | |
リンクの冒険 | 13.4 |
…見ての通り、「バルーンファイト」、「謎の村雨城」が全く売れていないことがわかる。
元々、評価が芳しくない「村雨城」はまあ仕方ないとして(笑)、「バルーンファイト」が振るわなかった事実は非常に驚きである。オリジナル版は同時期のリリースであり、「ファミコンミニ」でも18.6万本を販売した「アイスクライマー」とは対称的だ。
このことから、「ファミコンミニ」の売り上げに対するCMの影響は、それほど大きくはなかったと思われる。
4. 結論(のようなもの)
以上、長々と文章を書いたが、どうして今回僕が「ファミコンミニ」の販売本数を記事として取り上げたのか?その理由は一つだ。
「レトロゲームの復刻は、現実問題としてどの程度ユーザーの需要があるのか?」という個人的な疑問の答えを知ることができると思ったからである。
しかし、オリジナル版がミリオンセラーを記録したとか、あるいはレトロゲーマーの評価が高いタイトル(「悪魔城ドラキュラ」、「バルーンファイト」)が必ずしも売れている訳ではないという事実は非常に興味深い。
さらに、オールドファンによる“目的買い”を想定している商品であるため、テレビCMによる販促効果も過大な期待できない。
当blogでは、再三に渡って「レトロゲームの現行機への移植の必要性」を訴えているが、なかなか一筋縄ではいかない現状を思い知らされた所だ。
最後に蛇足ながら、先日公式にリリースが発表された「ハドソンベストコレクション」について言及してみたい。
既にファミコンミニで、「ボンバーマン」、「スターソルジャー」、「高橋名人の冒険島」が発売されていることを考えると、これらの作品を収録したタイトルは苦戦を強いられると思う。
個人的な意見ではあるが、他プラットフォームへの移植は初めてである「ロードランナーコレクション」、「アクションコレクション」、「謎解きコレクション」は各10万本、それ以外は5万本以下の販売本数になると予想してみる(笑)
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