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偏愛ゲーマー的書評 「STUDIO VOICE  2008年 11月号 ゲームを作ろう!」 [レビュー]

STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2008年 11月号 [雑誌]

STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2008年 11月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: INFASパブリケーションズ
  • 発売日: 2008/10/06
  • メディア: 雑誌
Video Game; The Last Creative Frontier
TVゲームが燗熟期を迎えて久しい。そしてカルチャーの中心部は、生まれたときからゲームに触れてきた世代が担っている。にもかかわらず、我々がゲームに求めるのは、あいかわらず受け手としての楽しみばかりではないだろうか。だが、ゲームもまた表現媒体に他ならない。それは、我々の創作欲望を刺激する最後のフロンティアなのだ。ケータイで小説を書き、デジカメで写真や映画を撮るのと同じように、我々はゲームを作ることができる。これは、そのための特集である。

スタジオボイス 2008年11月号 Vol.395 ゲームを作ろう!非ゲーム・クリエイターのための入門講座

「非ゲーム・クリエイターのための入門講座」というタイトルに惹かれて購入。
・・・う~ん、なんと表現していいのやら。とにかく、読んでいて非常に困惑してしまう内容でした。

まず、この特集は「入門講座」の体を成していません。
技術的な話は完全に無視。インタビューとか対談とかエッセイじみた文章が雑然と寄せ集められているだけ。記事全体を通じて、とにかく締りが無い印象です。

また個々の記事に関しても、クオリティにずいぶんと落差があります。個人的に、見るべきところがあったと感じたのは岡本吉起氏のインタビューと「強力ディヴェロッパー・リスト」、「いま有効なゲーム・カタログ」くらい。後は薄っぺらな文章を、(見た目は派手な)ページデザインでごまかしているようにしか思えませんでした。
特に、「エロゲーの作り方!」とのタイトルが付けられた海猫沢めろん氏の記事に至っては、“エロゲーの古典を学ぶ意味でも、『韋駄天いかせ男』、『道鏡』、『オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか』をプレイしておこう”などと書かれていて大笑いしました。
いや、僕はこういう高度なギャグは大好きですが、それって「入門講座」として言うべき話じゃないだろ?(笑)


■ActivisionとEAの生い立ちについて

『スタジオ・ボイス 11月号 ゲームを作ろう!特集』 (from SIZUMA DRIVE)

本誌の「強力ディヴェロッパー・リスト」は、多根清史氏とマスク・ド・UH氏のお二人が開発会社を紹介した良記事でした。
しかし残念なことに、アメリカの老舗ゲーム会社のActivisionとElectronic Artsの生い立ちを説明した部分に誤りが多く見られます。
Activisionの方は署名が無いのですが、おそらくどちらもUH氏が文章を書かれたのだと思います。まがりなりにも“洋ゲー伝道師”を名乗られている以上、もう少し気をつけていただきたいものです。

(原文)
Activision
 ゲーム開発会社としての歴史は古く、アタリVCS全盛期に設立された老舗のディヴェロッパー。ワーナーによるアタリ社への経営介入によって解雇されたメンバーを中心に構成されており、アタリショック以降はPCゲーム市場に以降〔原文ママ〕しながら、ファミコンが北米上陸を果たすと家庭用ラインを復活させて現在に至る。

(反論)
・アクティビジョンの設立は79年末。VCSの全盛期(81~82年)よりも前。

・アクティビジョンの初期メンバーはアタリを解雇されたのではなく自主退職。また、「構成されており」と現在進行形的な表現が用いられているが、当時のメンバーは既に残っていない。

・「ファミコン上陸時に家庭用ラインを復活」との説明は不適切。84~85年の期間にもVCS等の家庭用機で新作ソフトをリリースしている。

(原文)
Electronic Arts
 設立は82年と古く、スタンフォード大学を卒業した4人の有志によって結成された。当初はアタリVCS向けのソフトを開発していたが、悪名高き“アタリショック”の影響によってPCゲーム開発にシフト。
(中略)90年にGENESIS(北米版メガドライブ)への参入とともにFIFAやNFL、NBAといったスポーツゲーム団体の公式ライセンスを取得して一気に有名になった。

(反論)
・EA創設者のTrip Hawkinsと最初に雇用された3人(Rich Melmon、Dave Evans、Pat Marriott)の共通点として言及されるべきなのは、Appleの元社員であった点。

・「当初はアタリVCS向けのソフトを開発していた」とは明確な誤り。上記のようにTrip Hawkins氏はコンピュータビジネスに携わっていた人間であり、初めからPCソフトの開発に主眼を置いていた

・「GENESIS参入とともにスポーツゲーム団体の公式ライセンスを取得」という表現に疑問を感じる。
EA社が各団体の公式ライセンスを初めて取得したタイトルは次の通り。

『FIFA International Soccer』 93年
『Madden NFL '94』 93年
『Lakers vs Celtics and the NBA Playoffs』 89年
 

以上のように、EAがGENESISに参入した90年とは時期がずれているばかりか、『Lakers vs Celtics』に至っては完全に前の話である。
タグ:ゲーム
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コメント 2

zentaroh

EAやアクティビジョンは抑えているけど
USゴールドやオーシャンソフトを紹介してる本って殆どないですね
by zentaroh (2008-10-28 10:33) 

loderun

いちおうSTUDIO VOICEを弁護しておくと、現在活躍しているデベロッパーを紹介するのがこの記事の趣旨です。(欧州系ですとUbiやRockstar Gamesが取り上げられていますよ)

ただ、欧州系のゲーム会社の情報が少ないという点には全く同感です。日本はもちろん、英語で書かれた文献でも「アメリカ中心」な記述がどうしても多いんですよね。
by loderun (2008-10-28 12:31) 

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