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【奇ゲー列伝】 恐怖の胃袋破壊ゲーム [レビュー]

ナムコの岩谷徹氏が、70年代後半のゲームセンターにはほとんど見られなかった女性客を呼び寄せるために、「女性が興味を持つ“食べる”という行為」をキーワードにして『パックマン』を考案したとの逸話はあまりに有名です。

果たして当時の女性が、岩谷氏の思惑通りに『パックマン』の“ドットを食べる姿”に魅力を感じてくれていたかどうかは、今となっては定かではありません。ともあれ、『パックマン』はメイズタイプゲームで最も成功を収めたタイトルとなり、20年以上に渡ってナムコに利益をもたらし続けています。


さて、言うまでもなく「食欲」は、人間誰しもが生得的に持っている欲求です。「性欲」が無くても人は生きていける(たぶん?)けれど、空腹で力が出ない状態では何をするにもおぼつかない。

そう考えると、案外『パックマン』も自覚症状は無いものの、サブリミナル的にプレイヤーの「食欲」を刺激しているのかもしれない。これは、他の「食べる」という行為が描かれるビデオゲームでも同様です。
例えば、得点アイテムとして食べ物が登場する『バブルボブル』なんか、2人プレイだとつい意地になってケーキやらフルーツを取り合ってしまいます。あるいはファミコンの『デビルワールド』で、ソフトクリームに固執するあまり、壁に押し潰されてしまうとか。


そんな“食べる”というモチーフが登場するゲームとして、見る者にトラウマを残すほどの強烈なインパクトを持った作品を僕は知っています。我が国では限りなく無名に近いですが、本日は是非ともご紹介。

それは、アタリのVCS(日本名:アタリ2800)でリリースされた『Mangia』というゲームです。
『Mangia』 (from Atari Age

実は僕もプレイしたことは無く、最近になって海外のレビューサイト(Video Game Critic)で知りました。そこで目にした解説文のあまりの素晴らしさに、不覚にも夜中に大笑いしてしまったのです。

つーわけで以下、僕の拙い和訳に大幅な誇張を交えた上で、転載させていただきます。


■Mangia
メーカー:Spectravision リリース:1982年 評価:D+

VCSの激レアソフトです。同時に、私が知る限りVCS最強の奇ゲーでもあります。
タイトルの『Mangia』(読みは“マンジャ”)とは、イタリア語で「食べる」ことを意味します。

この異色なゲームの舞台は、イタリアのとある一般家庭 ― キッチンではマンマ(母親)が子供のためにパスタを作っています。
キャラクターのグラフィックは大きめで、細かく描かれています。つうか、正直キモいかも。

料理好きのマンマはキッチンを往復して、次から次へと子供の目の前にパスタを積み重ねます。プレイヤーは子供を操作して、マンマの出す料理を(方法はともかく)、完食しなければなりません。

もちろん、プレイヤーは普通に料理を食べることもできます。しかし許容量を超えてしまうと、子供の胃袋はパンパンになり、ついには破裂してしまうのです。

子供が臓物(はらわた)をぶちまける、その悲惨な姿!

嘘かと思うかもしれませんが、このゲームでは現実に起こります。そのあり得なさたるや、『モータルコンバット』の比ではない。

という訳で、最悪の結末を回避するために、(丁度都合よく)窓から顔を出すネコや、テーブルの下を歩き回る犬といったペットに向かって、パスタを放り投げることになります。*注1
ただし、この2匹は常に同じ場所にはいません。さらにペットに食事を与える際には、マンマがこちらに背を向けているかどうか注意が必要です。

何故なら、もしもマンマに見つかった場合、彼女は怒りのあまり一度に三皿もパスタを押し付けてくるからです。そして、テーブルの上に料理が溜まりすぎると、ついにテーブルの足は折れてしまいます(=1ミス)。

これは新手の悪夢ですか?(筆者は映画『セブン』を思い出しました)*注2

コントローラーで使用するのはスティックだけ、ボタンは不要です。『ストリートファイター』をプレイする時のように、ビシバシと食べ物を放り投げましょう。

ネコが登場するときの効果音は癪にさわります。ステージの間に流れるイタリア風BGMも、聞いているうちにムカムカしてくることうけあい。
このゲームは、プレイを始めてしばらくの間はまあ面白いと思うかもしれません。しかし、いつまでも同じことの繰り返しで終わりの見えない展開に、結局は途中で放り投げること必至です。

筆者はこのゲームに、「孤高のオリジナリティ賞」、そして「人を不穏にさせるで賞」を差し上げたい。
もっとも実際にはレア過ぎて、手に入らない事この上ないソフトなんですけどね。*注3




(いちおう解説)
*注1 本作のマニュアルによると、犬の名はセルジオで、ネコの名はフランキー。「皆さんはご存知ないかもしれませんが、イタリアのペットはパスタを食べます との説明もスゴイ。

*注2 デビッド・フィンチャー監督作品。キリスト教の「7つの大罪」に基づいて繰り返される猟奇殺人事件。犯人に翻弄される2人の刑事を描いたサイコサスペンス。衝撃的な結末は話題となった。
劇中、「大食」の罪によりミートスパゲティーを死ぬまで食べさせられ続けた大男が登場することを指している。

*注3 事実、Atari Ageでも本作は、入手難易度としては最高ランクの「Unbelievably Rare」の評価を受けている。



(謝辞)
最高のレビューを書かれた、Video Game Critic管理人のDavid Mrozek氏(実は個人サイト!)にこの場を借りてお礼申しあげます。


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