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バカゲー私論 【フォレスト・ガンプ放送記念】 [レビュー]

今夜放送のプレミアムステージはトム・ハンクス主演「フォレスト・ガンプ」だ。
実は僕は、この映画が大好きである。
当然DVDも持っている。廉価版があるのに、わざわざプレミアム・エディションを探し出して購入したほどだ。割高ではあるが特典映像が充実しており、大満足である。

主人公のフォレストは軽度の知的障害者だ。日常生活に支障をきたす程ではないが、「常識」という部分が(良い意味で)欠落している。それ故、黒人に対して差別感情を抱くことも無く、大統領を前にして「オシッコ漏れそうです」などと口走り、思いをよせる女性がストリッパーに身を落としても「彼女は念願のスターになったんだ」と喜ぶ。

彼は硬直した既成観念や一面的な社会思想に囚われることがなく、また世俗的な実利や欲望にも疎い。作品を通してフォレストは、他者とは一線を画す「純粋で自由な心」の持ち主として描かれる。
(この設定は「フォレスト・ガンプが好き!」と公言する僕自身も、エクスキューズとしては「ちょっとやり過ぎかな?」と思わないでもない。知能に障害でもない限り、人は「純粋」になれないという皮肉なのかな?)

そんなフォレストは、劇中で他人から「お前はバカか?」と何度も失礼な言葉を投げかけられる。それに対しての彼の答えは常にこうだ。

「Stupid is as stupid does.」(バカな事をするやつがバカです)

至言である。
バカとは一般的には「記憶力や認識力が標準より著しく劣る様子」と定義されている。しかしどんなに「バカ」な人間でも、彼が思考の帰結として「バカな行動」を外に示さない限り、他の人間は彼が「バカ」であると認識できないのだ。逆にいえば、あなたがどんなに頭の中で「バカ」な事を考えていようと、それを「行動」に移さなければあなたは「バカ」ではないのである。
「バカ」を行動として発露するか、否か?この境界は限りなく近くて、遠い。

という訳で本日は、地上波で放送されているにもかかわらず、わざわざ同時刻にDVDの「フォレストガンプ」を再生するという「バカ」をやりながら(ホントにやってます)、以下に文章を続けてみたい。

バカゲー」という言葉がある。「(笑うしかないような)バカなコンピューターゲーム」の略語だ。
これについてはWikipediaに非常によくまとまった定義が記されている。即ち、バカゲーには「製作者が意図的に作ったバカゲー」と、「製作者の意図を超えて、結果的になったバカゲー」の二種類があると言うものだ。基本的にはこの意見に異論は無い。
しかし僕個人としては、以前から何か「違和感」を感じていたのだ。

そんな時に出会ったのが、RSS登録もさせて頂いている「インターネット殺人事件(略してイン殺)」さんが書かれた、「バカなミステリー小説とは何か?」という文章だ。
結論から言うとイン殺さんは、「バカなミステリー」をさして、次の様に定義されている。曰く、「1.作者がバカ、2.作品がバカ、3.読者がバカ」、と。
素晴らしい。まさにこれこそ、僕が探していた言葉だ。

という訳で、不肖私loderunは、ここに「バカゲー」の定義として、以下の3点を主張するものとする。
即ち、
1.製作者がバカ
2.作品がバカ
3.プレイヤーがバカ

である。
順を追って説明したい。

まず、「1.ゲーム製作者がバカ」と「2.作品がバカ」は、それぞれ先にあげた定義の「製作者が意図的に作ったバカゲー」と「製作者の意図を超えて、結果的になったバカゲー」に基本的に対応している意味と取ってもらって差し支えない。
問題は3番目の「プレイヤーがバカ」だ。これを説明するのは、そう単純ではない。

具体的に例をあげよう。ジャレコの「燃えろ!プロ野球」だ。
このファミコン史上最も悪名が高い野球ゲームは(下手に売れてしまったという理由もあり)、「バカゲー」として現在でも大いに語り草になっている。
センター方向視点の特異なシステム、「ぺぼー」などと間抜けな響きの音声合成、バッティングの当り判定がおかしい点、走者の足の遅さ、果ては「バントでホームラン」、「ファウルのあとの投球がすべてストライク」といったあまりに有名なバグ。発売当時、新品を購入したものの、即座に中古ショップに叩き売った人間も多いだろう。

しかし、ここからが問題だ。
例えばある者が、いくら仕様として実装しているからと言って最大130試合のペナントレースモードを何回もこなしてしまったり、4番打者で毎打席バントホームランを狙ったり(普通に打った方が当る)、果ては「燃えプロ」のカートリッジを大量に集めだすに至ってはどう説明すればいいのだろう?そうまでして、この作品に殉じる必要があるのか?
ここで我々は、「製作者」でも、「作品」でもない、もう一つの要素に気付かされるのである。

それは、プレイヤーだ。

製作者の意図であるかどうかは問題ではない。明らかに常識として間違っている「仕様」をありのままに受け止め、尚且つ自分自身で咀嚼して楽しむ彼らの行為。
その時のプレイヤーの頭の中には間違いなく、普段の理性や常識とは乖離し、捻じ曲がった、「バカ」な思考が舞い降りているはずである

たとえば「ナッツアンドミルク」で、こんな↓自作面を作った憶えはないだろうか?

たとえば「バンゲリングベイ」で、マイクに向かって「ナムコ!」と叫んだことはないだろうか?

たとえば「大戦略」で、フィールドをすべて補給車で埋め尽くした経験はないだろうか?

たとえば「ハードドライビング」で、牛や対向車にフルスピードで突っ込み、インスタントリプレイを笑いながら見たことはないだろうか?

たとえば「メタルギアソリッド」で、巡回する敵兵の背中に片っ端からプラスチック爆弾を着けて回ったことはないだろうか?

カラテカ」で、スタート地点から後退すると崖から落ちるフィーチャーがある。確かにそんな仕掛けを用意した製作者もバカだが、一番最初にそれを発見したプレイヤーの思考状態はどうだろう?間違いなく「バカ」だ。

バカなことをするのがバカ」、とフォレストは言った。
その言葉に習って僕はここに、「プレイヤーがバカ」、即ち「プレイヤーにバカな思考を喚起させ、それを実行させるゲーム」 ―さらに邪推すれば、元々「バカ」な人間が、己のバカさ加減を「あけすけにさらけ出さざるを得ない状況」を作り出すゲーム― をバカゲーの第三の意味として唱える者である。

以上、ご清聴下さり有難うございました。

参考
○amazon.co.jpの「フォレスト・ガンプ」の商品情報
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000666Q24/
本当にいい映画です、でも、日本版に付けられた「一期一会」という副題はいまだに意味がわかりません。

追記:「悶えろ!モエプロゲッターズ」さんが閉鎖されていたのは残念です(2004年の夏頃?)。あの画像を是非とも紹介したかった…。
(2005/4/16) 保管されているサイトを発見しました。未見の方は是非!
「悶えろ!!モエプロゲッターズ」

追記2:話の収拾がついていない気がします(笑)。とりあえず、「ナッツアンドミルク」は比較的最近の実体験です。夜中に一人で大笑いしました。かなり病んでます。

(2004/2/20 文中リンク追加)


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コメント 4

今、いいこと言った!!
この定義はステキです。
バカでなくとも、バカなことを思いつかせちゃうゲームって何か根本的なゲームの本質っていうか、本来ゲームのもってる懐の深さを垣間見れる気がして、こういうのを遊びって言うんだろうなぁとか思います。
ま、僕の方はもともとバカなんで、そういうことしか思いつかないってのもあるんですが。

僕の場合は「スト2」の2人プレイでどっちもザンギエフを使用して、対戦と同時に2人してダブルラリアットを連続入力してタイムアップまでグルグル回ったりしてました。
明け方に酒飲んでやると、笑いが止まらずかなりハイになります。

というわけで、話の主旨とズレてるかもしれないですが、ステキな定義だというコトで、ナイスageです。
by (2005-02-20 03:31) 

loderun

賛同有難うございます。私個人の与太話をここまで大きくするのもどうかと思ったりしますが(笑)

ただ補足すると、例えばマリオブラザーズやバルーンファイトに代表される「2P殺し合いプレイ」などは「バカな行為」の最たるものですが、むしろゲームの想定範囲に収まります。
ですから、「普通のゲーム」を実際に「バカゲー」にまで昇華させるには、「1.製作者がバカ、2.作品がバカ、3.プレイヤーがバカ」の3つの条件を複数にまたがって、高いレベルで実現させる必要があるかと思います。つうか、そんなことを実現させる「必要」があるのか?(笑)
by loderun (2005-02-20 17:44) 

bamboosora

初めまして、bamboosora と申します。
最新記事ではなく、4年前の記事に「nice!」と「コメント」で失礼します。
「知的障害者」というキーワードで、こちらにおジャマしました。
我が家にも知的障害児がいるので、「フォレストガンプ」は我々夫婦も
大好きな作品です。 もちろん、DVDも持ってます。
(プレミアム・エディションではないですけどね。)
by bamboosora (2009-09-12 13:04) 

loderun

こちらこそはじめまして。コメント&nice!ありがとうございました。
久しぶりに4年前の自分の記事を読んだのですが、今と文体が全然違ってて正直恥ずかしいです(笑)
by loderun (2009-09-28 21:37) 

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