『マリオブラザーズ』の元ネタは『ジャウスト』? (その1) [レビュー]
当blogではすっかりお馴染み、業務用ビデオゲームのオンラインデータベース ― KLOV (Killer List of Videogames)。
リリ-ス年やメーカーの確認の際は、本当に重宝してます。
さて、話は先日に“マリオの帽子”について記事を書いた時のこと。KLOVの『マリオブラザーズ』のページの「Trivia」(トリビア)の項目に、興味深い一文を発見しました。
以下、引用。
(原文)
The idea that this game would be for two players did not come about until Shigeru Miyamoto was inspired by Williams' Joust.
(邦訳)
宮本茂氏は、Williamsのビデオゲーム『ジャウスト』から着想を得て、『マリオブラザーズ』に2人同時プレイを導入した。
初耳です。もしも、目の前に「へぇボタン」があったなら、16連射している所(笑)
果たして、これは宮本茂氏本人が実際に発言した事実なのか?
早速ウェブ上を探してみましたが、少なくとも日本のサイトにこの件を裏付ける記述は見出せませんでした。
しかし、確認は取れなかったものの、僕個人としては大いに納得がいく話に思えたのです。*注
◆Williamsの歴史
Williamsは80年代のアメリカのレトロゲームシーンを語る上で、欠かすことの出来ないメーカーです。
設立は1943年、元はピンボールマシンの製造会社でした。
初期のピンボールは、打ち出した玉を盤上のポケットに収めて点数を競う単純なもの。これは現在、コリントとして知られるゲームに近いです。
しかしWilliamsは、プレイヤーが玉を打ち返すことができるフリッパーを盤面の下段に配置するという、今日我々がイメージするピンボールの傑作機を数多く生み出します。これにより、ピンボールは「重力と偶然」が支配するゲーム性から、「プレイヤーの力量」によりスコアを伸ばすことが出来る遊戯機としての地位を手に入れたのです。
Williamsはアメリカの60年代の、「ピンボール黄金期」を支えたメーカーの一つであると言えます。
◆偉大なレトロゲーム達
70年代の電子技術の進歩により、Williamsもビデオゲームの分野に進出を果たしました。アタリの『ポン』、『ブレイクアウト』の大流行を受けてパドルゲームをリリースした後、Williamsは歴史に残る名作シューティングゲームを生み出します。
それが、『ディフェンダー』(80年)です。
なんとこのゲーム、『パックマン』と並び"アメリカで最も利益を上げたゲーム”(推定10億ドル以上!)として知られます。
この成功を元に、Williamsはビデオアーケードゲームの開発を積極的に押し進めます。
『ディフェンダー』の続編の『スターゲイト』(81年)、怒涛の数の敵を相手にする『ロボトロン』(82年)、台所の流し台が舞台のユニーク作『バブルス』(82年)、全方向スクロールSTG『シニスター』(82年)。
そんなWilliamsの輝かしい代表作の一つこそ、82年にリリースされた『ジャウスト』でした。
◆『ジャウスト』
日本語で「馬上槍試合」を意味する本作は、“重力”と“慣性”がゲーム性の要となるアクションゲームです。
他のWilliamsのアーケードゲーム同様、日本にはほとんど輸入されていなかったと恩われます。
プレイヤーはダチョウに乗った騎士。画面内のハゲタカに乗った敵騎士を全滅させればステージクリアです。
敵キャラよりも高い位置から接触すると、相手は卵となります。この状態で、さらに再び卵に接触すると完全に敵を倒すことが出来る。逆に自分よりも高い位置の敵キャラと接触するとミスになります。
プレイヤーの乗るダチョウは"Flap"(羽ばたき)ボタンを押すことにより上昇します。ボタンを連打すれば高く上昇することが出来ますが、ステージには重力がある為にボタンを押すのを止めると落下してしまいます。
また、コントロールレバーでプレイヤーは左右に移動することができます。レバーを入れっぱなしにすると、ダチョウは素早く走り出します。「走り」状態でレバーを逆方向に入れると急停止しますか、慣性が働くためにスリップしながら止まります。
これは空中でも顕著。高速で滑空している状態から、咄嗟に進行方向を変えるのは至難の業です。
以上、長々と『ジャウスト』のゲームシステムについて説明しましたが、一言で言うとファミコンの『バルーンファイト』と極めて類似しています。
そうです。『ジャウスト』は、『バルーンファイト』の原型として有名な作品なのです。
(その2へ続く)
宮本 アメリカで『ジャウスト』(82年・ウイリアムズ)っていう有名なゲームがあって。あ、『バルーンファイト』(85年)に似てるんじゃないかな。ダチョウに乗った兵隊さん同士で、空を飛びながら対戦できるんですよね。ああいう対戦タイプのゲームを作ろうね、っていうことで横井さんと作り始めたんですよ。 |
ナムコはアタリに育てられ、任天堂はウィリアムズに育てられてきたんですねぇ。
by f (2011-10-25 17:28)