「ゲームになった映画たち」に紹介されなかった映画ゲーム 【前編】 [レビュー]

ゲームになった映画たち 完全版 (GAME SIDE BOOKS) (GAMESIDE BOOKS)
- 作者: ジャンクハンター吉田
- 出版社/メーカー: マイクロマガジン社
- 発売日: 2011/03/31
- メディア: 大型本
今年の3月末に発売された「ゲームになった映画たち 完全版」を読了しました。
シネマゲーム―――すなわち映画版権に基づいて制作されたビデオゲームを一冊にまとめあげた研究本です。フルカラー256ページ、紹介されている映画のタイトル数はのべ400本以上にも及びます。
本書は2008年に発売された旧版に大幅な加筆訂正を加えたもの。僕は2008年版を買い逃していたため、今回初めて目を通したのですが、その圧倒的な情報量にはただただ驚かされました。
コナミの「グーニーズ」「キングコング2」のような有名どころはもちろんのこと、MSXのポニカゲーム、CSKの邦画ゲーム、欧州のオーシャンソフトといった一般的に知名度が低い作品までもが網羅されています。
著者の吉田武氏は28年以上(!)に渡ってシネマゲームの研究を続けてこられた上に、映画業界とゲーム業界の双方に造詣が深い。"アタリVCSの「スターファイター」は版権切れのために「ソラリス」と改名された"なんてトリビアをさりげなく披露されていますけど、一体誰がこんな話を聞いて喜ぶのか(笑)
アタリ社は「E.T.」がキッカケで倒産した(正しくは分割売却)、02年にプロトタイプが発見された「ワニ人間の恐怖」をファンメイドと誤解されているなど細かいツッコミどころが僅かにありますが、"究極のシネマゲーム研究本"との看板に偽り無しの大著です。
本書は発行部数が少ないようで、Amazonでも在庫が消えたり復活したりを繰り返しています。未入手の方には今のうちの購入を強くおすすめしますね。
ところで、あとがきにて吉田武氏も認められているように、ページ数や入手難といった事情から本書の選に漏れてしまったシネマゲームはまだまだあります。
そんなわけで補足がてら、僕の知っている作品をいくつか紹介させていただきたく思います。
【ミクロの決死圏】
<ストーリー>
脳内出血の重症を負った科学者の命を救うため、想像もつかない治療法が試みられる。外科手術不可能と診断されたその患部に、手術担当員を細菌大に縮小して送りこみ、体の内側から手術しようというのだ。制限時間は1時間、果たして作戦は成功するのか? (Amazonより引用)
1966年に公開された古典的サイエンス・フィクション映画。ジェームズ・キャメロン制作でリメイクの予定があるそうですが、果たしてクランクインはいつになるのやら。
本書の中でも触れられている通り、82年に20世紀フォックス傘下のFOX Video Games社より、アタリVCS対応のシューティングゲームとして発売されました。
VCSコンパチ機のTV-BOYに収録されていますので、お持ちの方はNo.35の「ぜビッウズ」を是非ともプレイしてみてください(笑)
○Fantastic Voyage (AtariAge)
○Fantastic Voyage (1982) (Atari 2600) (ビデヲゲーム研究室)
さて、ここからが本題。
あまり知られていない事実かと思いますが、この「ミクロの決死圏」はタイトーによってアーケードゲーム化されています。それが83年の「バイオアタック」です。
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○Bio Attack (KLOV)
○シューティング千夜一夜 ~第47夜~ バイオアタック (あたっく系)
タイトル名こそ異なるものの、ちゃんとFOX Video Gamesのライセンス表記があることがわかります。ゲーム内容も、患者の体内へと進入した潜航艇が心臓を通って最後に目から脱出するという映画のストーリーをおおまかに踏襲しています。
ただし、どういった理由でタイトーは「ミクロの決死圏」をゲーム化したのか?そして、正式に許諾を受けているにもかかわらず、なぜ映画の名前を使わなかったのか?といったあたりがわからないのですよね。
これは僕の想像なのですが、もしかしてFOXはアーケード事業への進出に興味を持ち、タイトーへ開発を依頼したものの、後に計画が中止されたためにやむなくタイトー自らが発売した...といった経緯なのでしょうか。
あるいは、元々「バイオアタック」はFOXと完全に独立した形で開発されていたのかもしれません。そしてこの時期にタイトーは、ターザンをモチーフにした「ジャングルキング」(82年)が権利者に訴えられるという事件を起こしています。つまりタイトーは、後付け的に許諾を受けたという可能性も考えられます。
いずれにしても、ちょっと謎な存在の映画ゲームです。
TO BE CONTINUED...(後編に続く)
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