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映画『レディ・プレイヤー1』のAtari 2600ネタ解説 [レビュー]

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 『レディ・プレイヤー1』――2018年に劇場公開されたスピルバーグ監督作品。近未来を舞台としながら70年代~90年代サブカルチャーを大々的にフィーチャーしていることで注目を集めた映画です。いよいよ7月3日に地上波初放送されるとのことで、Atari 2600の一ファンとして個人的な見所(またはツッコミ)をまとめてみました。
 ストレートなネタバレを含むため、全くの予断なしで視聴したい方はページを閉じてください。



 …と言いたいところですが、初見の方にもAtariとは関係ない話を一つだけ。
 本作の重要な場面で、Twisted Sisterの『We're Not Gonna Take It』が流れるので、あらかじめ歌詞の和訳に目を通しておくことをおすすめします。



※以下のスクリーンショットの字幕は、日本版BD/DVDに基づきます。




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Atari 2600
 本作のクライマックスとなる「第三の鍵」の試練で題材にされている家庭用ビデオゲーム機です。
 1977年にアタリ社より発売。元々はVideo Computer System(略してVCS)との名称でしたが、後にAtari 2600へ改名されました。1982年末までに1000万台を販売し、「ファミコン以前」に最も普及したゲーム機として知られています。



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 劇中の初登場シーンは「ハリデー・ジャーナルズ(年鑑)」の施設内。幼少期のハリデーがAtari 2600の『ディフェンダー』をプレイしている姿が映し出されました。



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 次にAtari 2600が登場するのはIOIの「シクサーズ」たちがゲームに挑戦している場面。テレビの画面に映っているのは『グラビター』です。



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 Atari 2600の間近までカメラが寄っている場面。このAtari 2600は6スイッチモデルであり、1977年~1979年に製造されたものであることがわかります。*1



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『アドベンチャー』
 「第三の鍵」が隠されていたAtari 2600対応ソフト。念のため書いておきますが、実在するゲームです。内容としては、悪の魔法使いに奪われた聖杯を奪還することが目的となるアクション・アドベンチャーゲームです。初期の2600ソフトの傑作として、今なおファンの間で高く評価されています。



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「史上初」のイースターエッグ
 劇中でも触れられている通り、『アドベンチャー』の開発者は当時アタリ社に在籍していたワーレン・ロビネットです。
 『アドベンチャー』が作られた1979年の時点で家庭用ビデオゲームの開発規模はまだ小さく、一人の人間が全てを担当することが一般的でした。しかし、アタリ社はゲーム開発者の貢献を認めず、ソフトのパッケージやマニュアル等に名前を出すことを決して許しませんでした。そのためロビネットは、全くの独断で自身の名を刻んだシークレットルームをゲームの中に隠したのです。*2

 もっとも、厳密に言うと『アドベンチャー』のイースターエッグはビデオゲーム初ではありません。家庭用に限っても、フェアチャイルド・チャンネルFで発売された『Video Whizball』(1978年)にイースターエッグが存在することが現在では確認されています。
 ただし『アドベンチャー』のイースターエッグは、家庭用ビデオゲームの歴史において最初期に発見され、口コミやゲーム雑誌を通じて多くのユーザーに知れ渡った初のイースターエッグでした。仮に先例が存在したとしても、その重要性は決して損なわれるものではないと言えます。*3



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『ジャウスト』
 IOIの研究室で、Atari 2600のカートリッジを机の上に勢いよくまき散らす場面。ここで名前が挙がっている『ジャウスト』は、元々1982年にリリースされたアーケードゲームであり、翌1983年にAtari 2600へ移植されました。ファミコンの『バルーンファイト』の元ネタとして知られるアクションゲームです。


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 ちなみにこの場面。上に挙げた画像ではわかりにくいですが、見えているだけでも『ジャウスト』のカートリッジが2本映っています。「なんでダブってるんだよ?」と思わずツッコミを入れたAtariファンは、僕以外にも居る…筈?(笑)



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『ピットフォール』
 『ピットフォール』はアクティビジョンが1982年に発売。なんと400万本を販売したAtari 2600を代表するアクションゲームです。
 それはともかく、問題はIOI研究員のセリフ。原文は「One of the only 2600 games that still hasn't ended.(いまだ結末を迎えていない2600のゲームの一つ)」といった感じなのですが、それって別に珍しい特徴でもなんでもありません。Atariファンの感覚では、なぜ「鍵」の候補になると思ったのかサッパリわからない珍セリフです。


『ソードクエスト』
 『ソードクエスト』シリーズは実在するAtari 2600対応ソフト。内容としては、アイテムを駆使してキーナンバーの出現条件を解き明かすアクション・アドベンチャーゲームです。
 1982年から1984年にかけて、『アースワールド』『ファイアーワールド』『ウォーターワールド』の計三作品が発売されました。*4



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 実は英語のセリフでは、「『ソードクエスト』の三作品ともハズレだった」とシリーズものであることを踏まえた正しい表現がなされています。



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 劇中でも軽く言及されていますが、この『ソードクエスト』シリーズは賞品総額15万ドルのコンテストが行われたことで有名です。まず、各作品を完全クリアした者の中から1名ずつ代表者を選び2万5千ドル相当の宝飾品を贈呈。さらに最終イベントの勝者に5万ドル相当の宝剣が贈られる予定でした。
 財宝のヒント(clue)を探すという点で言えば、『アドベンチャー』に次いでイースターエッグが隠されているゲームの候補にふさわしい作品です。



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ホワイトボードに謎のゲーム?
 問題のシーン、その1。
 IOIの研究所のホワイトボードには「鍵」の候補となるAtari 2600ソフトのタイトル名が書き連ねられています。その中に『Dragon Treasure』『Motocross』の名を見つけて僕は驚きました。
 結論から述べると、これらは正規に発売されたゲームではありません。前者はイマジックの『Dragonfire』の海賊版、後者はアクティビジョンの『Enduro』のクローンゲームのタイトル名です。関係者の中に重度のAtari 2600マニアが居たのか?それとも、誤って非正規品が含まれているAtari 2600のゲームリストを使ってしまったのか?個人的にはこの映画の中で一番の謎です。



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子供部屋のゲーム機
 問題のシーン、その2。
 映画の結末において、主人子は子供時代のハリデーの部屋に招かれます。この時、ハリデーがプレイしていたゲームはAtari 2600ではなく、なぜかコレコビジョンの『Gorf』でした。コレコビジョンは1982年に発売された家庭用ゲーム機。最大32枚のスプライト表示機能を持ち、Atari 2600よりも性能面で勝る「次世代機」でした。

 これだけなら、「ゲーム機を買い替えたんだね」で済む話なのですけど、問題なのはコレコビジョンの周りに転がっているゲームソフト。『パックマン』『ミサイルコマンド』など、何故か本来は互換性のないAtari 2600のカートリッジばかりなのです。
 例えるなら、ファミコンの隣にメガドライブのカートリッジが置かれているようなもので、個人的にムズムズとします。…まあ、身も蓋も無いことを言えば、他の場面に使った小道具を使いまわしただけなのだと思いますが(笑)*5


 最後に蛇足ながらもう一つ。『レディ・プレイヤー1』の主人公がオアシス内で使用しているユーザーネームはパーシヴァルですが、これはアーサー王伝説において聖杯探索を成功させた騎士(の一人)の名です。聖杯を手にすることが目的の『アドベンチャー』を意識したものだとすれば、ちょっと洒落たネーミングですね。


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*1 さらに細かく言うと6スイッチモデルには、初回生産分の「ヘビーシクサー」と二次生産分の「ライトシクサー」が存在するが、画面上からは判別できなかった。
*2 『アドベンチャー』のプログラムサイズは、わずか4KBである。
*3 『アドベンチャー』はInternet Archiveにおいてエミュレーターをプレイすることができる。(リンク
*4 『ソードクエスト』シリーズは上記三作品に加えて『エアーワールド』の計四部作が構想されていたが、市場崩壊のあおりを受けて発売は中止された。
*5 実はコレコビジョンは、Atari 2600ソフトをプレイできる変換アダプターが公式に発売されている。ただし、劇中においては①変換アダプターが映っていない、②コレコビジョン対応ソフトがスロットに刺さっている『Gorf』以外見当たらないことから、そこまでの深い意図は無いのだろう。
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