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MSXの未発売ソフト『密林の秘宝(Whistler's Brother)』 [レトロゲーム]


MSXパーフェクトカタログ (G-MOOK)

MSXパーフェクトカタログ (G-MOOK)

  • 出版社/メーカー: ジーウォーク
  • 発売日: 2020/05/28
  • メディア: ムック


 2020年5月末発売の『MSXパーフェクトカタログ』を入手しました。
 このジーウォーク社のムックは、今までファミコン、メガドライブなどの家庭用ゲーム機を題材としてきました。そのため、ホームコンピュータに分類されるMSXが選ばれたことはちょっとした驚きでした。
 一方で、「主要家電メーカーが参集した統一規格機」との稀有な特徴を持ち、質・タイトル数ともに同時期の家庭用機と比べても遜色のないゲームソフトが発売され、アマチュアを含めて多くのプログラマーを育む孵卵器の役割をも果たしたMSXは、我が国のゲーム史を語る上で欠かさざるべき存在であることも事実です。
 最初のMSX規格機が発売された1983年より40年近くの年月が過ぎた現在において、網羅的にMSXのことを知ることができる書籍が商業出版されたことは単純に偉業だと思います。

 もちろん、本書の内容に少なくない数の不備(誤植、記載抜けなど)があることは承知しています。それでも尚――僕自身が元MSXユーザーであることによる贔屓目が多分に含まれていますが――本書はMSXに興味を持つ全ての人におすすめしたい一冊です

 ところで『MSXパーフェクトカタログ』では、実用系ソフトは敢えて掲載対象から外されているようです。(例えばカシオの『コンピュータ入門』『ゲームランド』『描きくけコン』など)
 さらにこの手のムックでもフォローされる機会が少ないのが、未発売ソフトの情報です。ハドソンの『バギージャンプ』、アスキーの『魔界村』、ランダムハウスの『獣神ローガス』、ピクセルの「NEO伝説」3作目以降など、当時のMSXユーザーならいくつか思い出すことができるのではないでしょうか。

 というわけで今回の記事では、個人的に長年気になっていたMSXの未発売ソフトを一つご紹介します。


whistlers_brother_ad.jpg

『密林の秘宝(Whistler's Brother)』*注
 MSXマガジンの1986年12月号および翌87年1月号に広告が掲載されたアイレムの未発売ソフトです。僕が知る限り画面写真は公開されたことがないと思います。
 ゲーム内容を紹介する文章は次の通りです。

よべばこたえる兄弟愛
博士号をもつ兄とスウィーフィー教の回転踊りに夢中の弟との大冒険。口笛を吹いて注意散漫な兄をすくう弟。落石、蛙、ミイラと次々に襲いかかる危険を逃れて兄弟が見たものは、はたして…

 「スウィーフィー教って何だ?」「注意散漫な兄?」という謎だらけの説明文に困惑した記憶があります。結局、Mマガの2号に渡って広告が掲載されただけで音沙汰が無くなってしまったものの、個人的に強く印象に残っていました。
 そして時は流れてインターネットの時代。海外のWEBサイトを通じて、ようやくその正体を知ることができました。


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『Whistler's Brother』 (Mobygames)

 『Whistler's Brother』は1984年にブローダーバンドから発売。対応機種はAtari 8-bit PCおよびCommodore 64となります。Mマガの広告に記載されている英字タイトルと一致することから間違いないでしょう。
 当時のアイレムは、同じくブローダーバンド作品である『ロードランナー』『スペランカー』を移植・販売していました。おそらくその過程で、本作の許諾取得およびMSX版の発売が計画されたものと思われます。




 ゲーム内容は横視点のアクションゲームとなります。プレイヤーが操作するのは、考古学者の兄に付き従う弟。危険な罠を避けつつアイテムを集め、桟橋、船上、そして南米の古代遺跡へと続く計13ステージの冒険を完遂することが目的となります。
 兄を直接操作することはできません。また弟は、兄を画面外へ置き去りにして移動することができない仕様となっています。そこで弟は「口笛」を吹くことで兄を誘導する必要があります。
 加えて本作には、ステージ内の障害を突破していくパズル要素があります。アイテムを2つ所持した状態で、弟は特技の「回転踊り」を舞うことにより、途切れた足場に橋をかけるといった芸当を披露することができます。


Whistler's Brother : Broderbund
 『Whistler's Brother』はInternet Archive上でプレイできます。
 操作はテンキーの「2,4,6,8」で移動、「0」を押すと口笛。回転踊りは4または6を押しながら0です。

 ところで単純に疑問なのですが、どうしてアイレムは広告まで打っておきながら本作をキャンセルしたのでしょうかね。もしも発売されていれば『ジェットセットウィリー』と並び、MSXの変な海外ゲーム移植作として語り継がれる存在になっていたかもしれません(笑)


*注 後に「IM-03」の型番は、MSX2対応ソフトとして発売された『スーパーロードランナー』に割り振られている。

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