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『チョップリフター』の元ネタはアメリカ大使館人質事件なのか [レトロゲーム]

1979年11月に起きたイランアメリカ大使館人質事件の際、米軍がヘリコプターを使用し特殊部隊デルタフォースを突入させたイーグルクロー作戦に着想を得て制作されたと言われる。
チョップリフター - Wikipedia(日本語)

カーター大統領の時の、ヘリコプターを使ったイラン人質救出作戦の失敗にヒントを得て作られたゲーム。日本のゲームには見られない社会性・時事性を持ち、アメリカではとても人気があった。
○『テレビゲーム電視遊戯大全』 UPU(1988年)



最初に答えを書いてしまうと、これは「単なる誤伝」です。


choplifter.jpg
Choplifter! screenshots - MobyGames

『チョップリフター(Choplifter!)』は、1982年にブローダーバンド社より発売された任意サイドスクロール・シューティングゲーム。
オリジナル版の対応プラットフォームはApple IIですが、80年代の主要な8-bit PC、家庭用ゲーム機に必ずと言ってよいほど移植されています。
ゲーム内容としては、自機となるヘリコプターを操作し単身で敵勢力圏に残されている捕虜を救出、最終的に規定人数の捕虜を自陣の基地まで連れ帰ることができればステージクリアとなります。

さて、冒頭に挙げた“『チョップリフター』はイランアメリカ大使館事件の人質救出作戦から着想を得た”との俗説。我が国のみならず、アメリカでも長らく信じられていました。
イーグルクロー作戦が決行されたのは1980年4月。作戦失敗後、ホワイトハウスは直ちにその事実を公表しています。そして翌々年の82年、ヘリで捕虜を救出するゲームが登場したとなれば、関連性を考えてしまうのも無理からぬところです。

しかし、『Halcyon Days』(97年)のインタビューの中で、『チョップリフター』の開発者であるダン・ゴーリン(Dan Gorlin)氏は次のように述べています。

トレードショーで子供たちが『チョップリフター』をプレイしようと列を作っていたこともあって、ブローダーバンド社で我々はこのゲームが成功するだろうと皆が感じていた。しかしその売れ行きは誰も予想することができない類のものだった。(中略)
信じられないかもしれないが、ゲームを発売するまで、当時の事件と結びつけることなど私の頭の中には本当に思い浮かばなかったのだ。

では、実際に『チョップリフター』は、どのような経緯で生み出されたのか?
ダン・ゴーリンの証言によれば、彼は祖父から借りたApple IIを用いて、画面上のヘリコプターをジョイスティックで操るプログラムをまず組み上げました。
そして、彼の家によく出入りしていた『ディフェンダー』ファンの地元の子供が、ヘリで拾い上げることができる人間を加えてはどうかと提案したのです。

私はコインランドリーに足を運んで、彼の言っていたことを理解するために『ディフェンダー』を――自分では一度もプレイすることなく――徹底的に観察した。
(ゲーム内に登場する)人間のことはどうしてもわからなかったけれども、私は彼の言葉を本当だと信じ、そして素晴らしいアイデアだと思ったのだ。

この証言はちょっと興味深い。
というのも、そもそも『ディフェンダー』は人間をさらおうとする敵を迎撃するシューティングゲームです。プレイヤーの操る機体は敵から解放した人間を空中で受け止めることができるものの、地上から直接拾い上げるわけではありません。
即ち、捕虜の救出という要素が『ディフェンダー』からの着想だとしても、ダン・ゴーリンはそれを独自にアレンジした形で『チョップリフター』に採用したことがわかります。

ただし経緯はともあれ、"イラン人質事件は(売上の)大きな助けになった"とダン・ゴーリン氏自身も認めています。逆説的ではありますが、『チョップリフター』の商業的成功が当時のアメリカの世相を反映したものであることは間違いないのでしょうね。



ちなみに『チョップリフター』は、つい最近の2012年にHDリメイク版が発売されています。


Choplifter HD

残念ながら僕は未プレイですが、現代的な3Dグラフィックに変化しても、オリジナル版のエッセンスが上手い具合に受け継がれているようです。表現がリアルになったために、誤って捕虜を殺してしまった時の罪悪感が半端無さそう(笑)

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