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【珍説】 アタリVCSはゲーム&ウォッチに負けた? [レビュー]

【珍説】
 1980年代というのは、デジタルエンタテインメント市場で、LSIゲームが急速に台頭してきた時期にあたります。その代表格が、日本で社会現象となった「ゲーム&ウォッチ」ですね。日本における最盛期は1982年あたりでしょうか。もちろん「ゲーム&ウォッチ」は米国にも進出しており、巨大なブームを巻き起こしています。これは、ちょうどアタリショックの時期と重なるのですね。(中略)

 そうなのです。いまからおよそ25年前にも、据え置きゲーム機と携帯ゲーム機(LSIゲーム)の主役争いが勃発していたのですね。1983年、据え置きゲーム機であるATARI VCS市場は、ただ自爆するようにして終焉を迎えたのではありません。そこではゲーム史上初の、据え置きゲーム機から携帯ゲーム機への主役の交代が行われていた、と考えることも可能です。ゲームユーザーは、つまらなくなってきた据え置きゲーム機から離れ、魅力的な携帯ゲーム機へと、興味を移していったのですね。

2006年は「第2のアタリショック」の年だった ゲーム市場を揺るがす四半世紀ぶりの地殻変動 (from 日経ビジネスオンライン)


【反論】
昨今の据置ゲーム機不振とニンテンドーDSの躍進に関して、かのアタリショックを引き合いに出して解説している記事です。
全体的にツッコミどころ満載なのですが、やはり極めつけは“アタリVCS衰退の理由の一つは、ゲーム&ウォッチを代表とするLSIゲーム機に主役の座を奪われたから”との説明でしょう。
あまりの衝撃に思わずモニターの前で引っくり返ってしまいました。ありえねー(笑)。

確かに北米の携帯型電子ゲーム機市場には、任天堂やバンダイ、トミー、エポックといった日本のメーカーのみならず、マテル、タイガー、コレコ、パーカーブラザーズなど現地の企業も多数参入していました。
ただしその最盛期は、せいぜい83年までです。
いわゆるアタリショック以降の83年からNESが登場する85年までの期間に、“据え置きゲーム機から携帯ゲーム機への主役の交代が行われていた”などという現象は、全く存在しません。

そもそも、「携帯型電子ゲーム機」の代名詞的存在である任天堂のゲーム&ウォッチ・シリーズ自体、83年~85年のアメリカで商業的に失敗していることを、この野安ゆきお氏はご存知ないのでしょうか?

デヴィッド・シェフ著『ゲーム・オーバー』によれば、NOAが北米でゲーム&ウォッチ事業の旗揚げを行ったのは、確かに“アタリショックの時機”とされる83年です。*注 けれども、その実情は野安氏の説明と大きく異なります。
当時、業務用ゲームに大半の収益を依存していたNOAにとって、玩具業界への進出は初の試みでした。しかし、商習慣の違いやプロモーションの失敗に苦しめられ、売上は低迷します。
結果として、「NOAはアメリカでゲームウォッチによって数百万ドルの損失を出した」と記されています。
この事実だけでも、“「ゲーム&ウォッチ」は米国にも進出しており、巨大なブームを巻き起こしています”との文章がいかに杜撰であるかが判ります。

ただし、北米のゲーム&ウォッチ販売の不振を、NOAの力量不足だけの問題とするのは早計でしょう。
野安氏は記事の中で、ゲーム&ウォッチを“外でも気軽に遊べる携帯ゲーム機”と表現されています。どうやら、82年以前にリリースされた製品群をイメージされているように見受けられますね。
しかし、83年~85年のゲーム&ウォッチに目を向けてみると、カラー表示のテーブルトップやパノラマスクリーン、2人プレイが可能なマイクロVS.といった比較的高額かつ大型のモデルが新たに投入されていました。
これらの「携帯機」が、外に持ち出すには不向きであるのは明白です。

テーブルトップやマイクロVS.が誕生した理由は、言うまでもなく従来の電子ゲーム機の弱点であった「表現力」や「ゲーム性」の向上を目指したからです。しかし、その一方で「携帯性」と「安価」という二つの大きなメリットが失われてしまいました。

かの横井軍平氏が、新幹線の中でサラリーマンが暇つぶしに電卓で遊んでいる光景からゲーム&ウォッチを思いついたとの逸話はあまりに有名です。
「任天堂自身が携帯電子ゲーム機の存在意義を見失ってしまった」 ― この辺りが、83年~85年のアメリカでゲーム&ウォッチが失敗した原因ではないかと僕は考えるのです。


最後に全然話は変わりますが、粗製乱造という意味では当時の電子ゲームもかなり酷い状況だった気がします。特に「キャラを変えただけで、実は同じ内容」な商品を連発したバンダイ、ポピー、ヨネザワには、子供心に殺意を憶えましたね。
そんな電子ゲームも、今ではネットオークションで高値で取引されていたりして何だか複雑な心境になりますが(笑)。


*注 もちろん、83年以前にも北米でゲーム&ウォッチはリリースされている。ただし自社販売ではなく、ディストリビューターを通じて販売されていた。

(2007/4/28) 本文一部訂正


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コメント 2

おーしゃん

まぁ、自称「情報通」な人はいますからねぇ…。
PS3&Wii発売時に「PS3の出荷台数はWiiの販売台数より多い」とか言うような人じゃないですかね?(笑)

ゲームウォッチはウチも良く遊びましたねー。
loderunさんが言うように「中身がまったく同じ」なゲームが多かった事に怒りを覚えたものです。
でも、やはりゲームウォッチ版ドンキーコングは今でも忘れられません。
あの2画面は今見ても斬新なデザインしてますよねー。
DSのご先祖様ですし。(マテ
by おーしゃん (2007-04-28 00:19) 

loderun

あ~、僕も次世代機に関しては、「SCE陣営有利」と予想しちゃった過去がありますからねぇ(苦笑)

もっともこの記事は、将来の予測ではなく過去の事例を論じているわけで、「アタリショックは電子ゲームが原因」などと極めて独創的な主張をされるのなら、もう少しマシな根拠を提示してほしいものです。

「電子ゲーム=粗製濫造」は一度言っておきたかったセリフです。バンダイのキャラゲーが地雷なのは、ファミコン以前からの定説!
あと、GW版ドンキーコングは傑作でしたね。「DSのご先祖様」でいいと思いますよ、たぶん(笑)
by loderun (2007-04-28 21:04) 

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