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「ゲームセンター」の追憶 ― CHILDHOOD'S END [レトロゲーム]

ゲームセンター略してゲーセン (from まんだらけWEBサイト 岩井の本棚

先日の記事のコメント欄にも書いたが、僕にとってのインベーダーゲームは「大人の玩具」だった。今となっては笑い話だが、本当に信じ込んでいた。

そもそも、僕が生まれ育ったのは、メーカー直営店など存在しない地方都市だった。
しかも小学校の夏休みのしおりとか、必ず「ゲームセンターには保護者同伴でも立ち入ってはいけません」なんて注意書きが書いてあったものだ。
そんな状況で子供がアーケードゲームをプレイできる環境と言えば、自ずと限られてくる。デパートやドライブイン、宿泊施設などの遊戯コーナーだ。
実は80年代中期までのアーケードゲーム黄金期において、僕は「ゲーセン」でのリアルな体験に乏しいのである。

さて、上に挙げたコラムでまんだらけの岩井さんが述べている「アーケードゲーム=映画」説について、いくつか指摘したい。
まず、日本映画の斜陽化の原因は、系列劇場に自社作品を配給する「ブロックブッキング制」というかつての興行形態が行き詰まったことにある点を留意すべきだ。

ブロックブッキング制とは、あらかじめ映画作品の上映期間が決められているシステムである。たとえ作品が不人気であっても、決められた期間は上映されなければならない。逆に、大ヒット作でも系列劇場では期間を延長しての公開はできない。
当然のことながら、ナムコにしろセガにしろタイトーにしろ、自社ロケーションを持つアミューズメント会社にそんな手法は存在しない。つうか、他社製品だって場合によっては設置するし。

また、岩井さんは映画(=アーケードゲーム)が衰退した理由として、テレビ番組やビデオソフトを挙げている。その上で、「テレビをコンシューマー機」、「テレビやビデオに降りてくることを移植」であると説明する。このアナロジー自体は、僕も異論はない。

しかしよく考えてみると、ゲーセンこそが“ビデオゲームの原風景”である筈の田尻氏からして、自身が興したゲームフリークでは一貫して家庭用機にゲームを供給している。
あるいは『ゼビウス』、『ドルアーガの塔』の作者の遠藤雅伸氏も、『イシター』を最後にコンシューマーの道へと進んだ。

僕は、「田尻氏や遠藤氏はゲーセンを見捨てた」と非難したいのではない。
例えば、昭和中期の邦画黄金期を支えた映画監督で、好んでテレビに活躍の場を移した人は皆無ではなかったか?
これに対して、ビデオゲームの世界では、多くのクリエイター達が積極的に家庭用機へと身を投じたのだ。そして彼らのゲームを、僕たちは歓喜の声で出迎えた。
アーケードからコンシューマーへのシフトは、実はメーカーとユーザー双方が望んだ結果と言える。

さらに言えば、ナムコの岩谷徹氏が普段ゲームセンターに足を踏み入れることのない女性を呼び寄せる為に『パックマン』を思いついた逸話は有名である。
つまり当のメーカー自身が、70年代後半の昔よりゲーセンの“健全化”“大衆化”を既に見据えていた訳だ。(もっとも岩谷氏の願いが現実となるのは、「UFOキャッチャー」と「プリクラ」が普及するまでの、20年近い歳月が必要だったけれど)

田尻氏は、“映画やロックが、かつて通ってきた道”と同じように、“ゲームが愛される時代”がいずれ到来すると「パックランドでつかまえて」の中で述べているそうだ。
彼の予言は、ある意味で正しかった。

映画館がシネコン化し、ロックから反社会的メッセージが失われてしまったのと同様に、ゲーセンは万人向けのアミューズメントパークへと変容してしまった。商業主義に取り込まれた“文化”の行き着く先として、必然の結果だったのかもしれない。それはそれで、仕方のないことだと思う。
けれども、時代の波からこぼれ落ちていくゲーム達を、僕はどうしても見捨てることができない。

冒頭にも書いたように、僕は「ゲーセン」に関するリアルな経験は薄い。だが、当時のアーケードゲーム達が素晴らしい作品ばかりであることは、紛れも無い事実だと信じている。
そういう訳で、blogにレトロゲームに関する記事を書き留めることは、往生際が悪い僕に出来るささやかな抵抗なのだ。

(06/2/16) 本文一部修正


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コメント 2

Aya

不良の溜まり場からレジャー施設へ・・・思えば凄い変更ですな。
そして、1人で行く場所から皆で楽しむ場所へと風景もシフトしていったアーケード業界ですけど、やっぱりそれでも「ある程度殺伐とした雰囲気」があるのは個人的に家庭用では楽しめない雰囲気だったりします。


開発者への「プレイヤーとしての意地をワンコインでどこまで見せれるか」ってのが最近の楽しみかも(笑)
by Aya (2006-02-15 10:42) 

loderun

nice!ありがとう!
感情にまかせてガーッと書いてしまった文章なので、後でちょっと追記してますが(苦笑)

上の文章では端折りましたが、元々ビデオゲーム以前の業務用遊技機は、デパート等の商業施設が主な設置場所でした。
ビデオゲームのみで構成されるゲーセンというのは、『インベーダー』ブームが生んだ畸形的業態だったんですよね。そういう意味では、ゲーセンのレジャー施設化というのは、原点回帰と言えなくもないです。

ワンコインクリアが嬉しいのは、僕もよくわかります。ああいう達成感は、コンシューマーではなかなか味わえないですね。
by loderun (2006-02-16 16:31) 

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